理化学分析センター担当者コラム

~土について~

写真1 土壌標本(富士平工業株式会社製)

「畑」というと関東に住み慣れた方では「黒い土」、関西に住み慣れた方は「茶又は赤色の土」を思い浮かべるのではないでしょうか?「土」と一言でいっても日本だけでも沢山の種類があります(写真1)。

もちろん、色も違いますし、化学的には構造も、成分も、そして重さも違います。
土壌学の世界では、「土」とは想像以上に化学で満ち溢れたもので驚かせられます。

ここでは、日本の「農業」に関する土の種類と特性、また、基本的な肥料の種類と効き方、土壌診断の見方などを簡単に説明していきたいと思います。

第1章 土の種類について

~黒ボク土~

現在日本の普通畑の約45%はこの「黒ボク土」ですが、世界的には非常に希少な土として知られています。
名前の由来は、「色が黒くて、歩くとボクボク埋もれる土」からと言われています。
色が黒いのは腐植(有機物)を豊富に含むためで、これは表層黒ボク土の特徴です。下層では腐植があまり無いため色は黒くありません。

土壌分析をする際に「下層黒ボク土」と日本に広く分布する「褐色森林土」は後述するリン酸の吸着力以外見た目、感触、その他の診断における化学性では全く区別がつきません。

「黒ボク土」は、土壌粒子、有機物等が結合して集合体となる団粒構造に富むため、保水性、通気性、透水性などの物理性が良好です。このためやわらかく比重も軽いため、歩いた感触はまさに黒「ボク」土といえるのではないでしょうか。

~リン酸等の吸着~

黒ボク土は火山灰を母材としています。化学性としては活性アルミニウムを多く含むため肥料成分であるリン酸を吸着してしまい効きにくくする特徴をもっています。
そのため黒ボク土はリン酸が効かないから入れれば入れるほどよいという認識で施用され続け、また近年までリン酸過剰の害が見えにくかったことも相まって、今では特にハウスにおいて過剰にリン酸が蓄積した状態の土も見受けられるようになりました。

~黒ボク土の腐植は効かない?~

黒ボク土は、腐植が豊富ですが、この腐植も活性アルミニウムに吸着しており難分解性で作物にはあまり利用できないものとなっています。土壌診断結果としては見かけ上高く腐植の値が出ますが黒ボク土はそのような性質があるということを前提に判断することが必要です。

つづく H27.5.15